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■   早朝   ■

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 朝、目覚める。
 白光が障子をすかしてわたしの身体にふりそそぐ。
 少しまぶしい。
 掛け布団をずらして上半身を起こすと、背中が震えた。
 暖まった身体から熱が逃げていく。
 もう一度布団にもぐりこみたい衝動をふりはらって、足元を布団から抜いて立ち上がる。
 身を起こしてみれば、立っていられないほど寒いわけではなかった。
 化粧台に置かれた鏡に、起きたばかりの自分の顔が映っている。
 髪にひどい寝癖がついている。
 それと、こちらを見つめるだらしない両眼。
 自分の顔とはいえ、あまりに情けない。
 畳を踏みしめて襖を開ける。
 襖に面した廊下は、さすがに部屋より少し肌寒い。
 気持ち足早に台所へ向かう。
 足の音が廊下をぎしぎしと鳴らす。
 時刻は早朝。
 自分がひどい騒音を出しているのではないかと、錯覚する。
 台所について、汲み水を溜めた甕を開ける。
 右手で柄杓を扱い水を汲み、一部を洗面器に入れ替える。
 洗顔するために使う量が組めたので、柄杓を手ごろな場所に置く。
 ゆっくりと両手を水に差し込む。
 洗面器の水が、ひやりと両手を冷やす。
 水をすくいながら両手を引き抜き、静かに顔にあてがう。
 心地よい冷たさが顔面を流れていく。
 同時に、どこかにまどろんでいた倦怠感も流れ落ちていく。
 濡れた箇所を布巾でぬぐい、かけ直す。
 不思議なことだが寝ぼけ眼より冴えた眼の方が、世界が明るく見える。
 春爛漫ばかりじゃいけないのねなどと考えるが、冬全開も嫌だなーとも考える。コタツは愛しいけど。
 脱線しながらわたしの足は私室に向かう。
 先ほどの廊下の肌寒さは、それほど感じなくなっていた。
 部屋に戻り、上着を脱ぐ。下着もだ。
 代わりに布団の近くに畳んでおいた普段着を広げる。
 正確には、普段着ではなく仕事着なのだが。
 ……しかし着るたびにいつも疑問に思う。どうしてこの服は腋が見えるように作られているのだろうか。
 どう考えても、この服に名づけられた名前にはふさわしくない造形な気がして仕方がない。
 腋見せ好きならいいのかもしれないが、残念ながらわたしはそうではない。残念でもないが。
 一通り着付け終わり、頭にリボンをそえる。
 鏡を見れば、さきほどのだらしない少女はもうそこにいない。
 紅白の巫女衣装を着た女の子が、こちらを見ていた。

「よし、っと」

 気が引き締まるのを感じて、足を玄関に向ける。
 まずは境内の掃除を始めよう。
 昨日は風が強かったから、木の葉やゴミが散らかっているだろうから。
 その次は炊いておいたご飯と漬物で朝食をとろう。
 腹が減っては戦は出来ないというし。
 午前中の計画を立てたところで玄関に着いた。
 履物をはき、扉を横にずらして家を出る。
 神社の境内に出て上を見上げると、雲ひとつない空が見えた。
 ――遠くの空に一点の黒いのが見えるのは、放っておいて。

 今日も一日、のんびりと快晴であれと思う。

 そんな当たり前の一日の、始まり。